麦茶がノンカフェインだと知らないまま、避けている人がいる

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夕方、麦茶を配りに行くと断られることがありました。
「お茶はやめとくわ、夜中にトイレが近くなるから」。

一人二人ではありません。
特別養護老人ホームの厨房と栄養管理を13年やってきて、この断り方は毎年聞きました。

管理栄養士の桜井亜紀子といいます。
いまはフリーで、高齢者向け配食サービスの献立監修と、市の健康講座の講師をしています。

麦茶にカフェインは入っていません。
それでも「お茶」というひとことで避けられてしまう。
この取り違えが、思っているより広く起きています。

麦茶は、成分表のうえでも「お茶」ではありません

文部科学省の食品成分データベースで麦茶を引くと、分類は「し好飲料類/その他/麦茶/浸出液」となっています。
せん茶や玉露が入っている「茶類」ではなく、その他のほうです。
英名も roasted barley tea、つまり焙煎した大麦の飲み物と書かれています。

日本食品標準成分表では、茶類とコーヒーについてはカフェイン量が備考欄に載ります。
麦茶のページには、その欄そのものがありません。
ゼロと書かれているのではなく、測る対象にすら入っていない、ということです。

原料が茶葉ではないので当然といえば当然なのですが、飲む側から見れば見た目も色も湯呑みも同じです。
「お茶」と呼んでいる限り、区別がつかないのも無理はないと思っています。

取り違えは、逆向きにも起きています

国民生活センターが2021年11月4日に公表した飲料のカフェイン含有量に関する調査に、成分表をもとにした目安量が整理されています。
浸出液100gあたりの数値です。

飲み物カフェイン量
コーヒー60mg
紅茶30mg
せん茶・ほうじ茶・ウーロン茶20mg
玄米茶10mg
麦茶記載なし(分析対象外)

ほうじ茶が、せん茶と同じ20mgです。
香りが優しくて色も薄いので、カフェインも少ないだろうと思われがちですが、成分表のうえでは変わりません。

同じ資料には、乳幼児を持つ母親を対象にした調査で、ほうじ茶や玄米茶にカフェインが含まれているという認識が低かった、という報告も引かれています。
カフェインの入っていない麦茶が敬遠されて、20mg入っているほうじ茶が安心して選ばれている。
現場で見ていた光景と、そのまま重なりました。

「水分補給にならない飲み物」は、名前ではなく量で決まります

とはいえ、カフェインの入った飲み物を全部やめましょう、という話をしたいのではありません。
利尿作用を心配するなら、種類で線を引くより、1日に何杯飲んでいるかを数えるほうが早いです。
飲み物ごとの向き不向きは、水分補給にならない飲み物まで整理している日本薬健のコラムが読みやすくまとまっています。

高齢の方の場合、もう一段手前に問題があります。
環境省の熱中症環境保健マニュアルには、加齢とともにのどの渇きを感じにくくなること、体内の水分量が少なく脱水になりやすいことが書かれています。
渇きを感じないうえに「お茶は控えたほうがいい」という思い込みが乗ると、飲まない理由が二重になります。

だから私は、飲む理由を増やすより、飲まない理由を一つずつ外すようにしていました。
現場で効いたのは、こういう地味なことです。

  • 大きなコップでまとめて出すのをやめ、小さい湯呑みで回数を増やす
  • 「お茶ですよ」ではなく「麦茶です、カフェインは入っていません」と一言添える
  • トイレの不安が理由の方は、飲む時間を夕方までに寄せる
  • 汁物を一品足して、食事からも水分が入るようにする

四つ目は本人の努力がいらないので、いちばん確実でした。

まとめ

麦茶は茶葉から作られていないので、カフェインは入っていません。
一方で、ノンカフェインだと思われやすいほうじ茶には、せん茶と同じだけ含まれています。
このふたつを取り違えたまま、飲めるものを減らしている人がいます。

母にも同じことを言われた経験があります。
「お茶は飲んでるから大丈夫」と言うので中身を聞いたら、緑茶を一日二杯だけでした。

まずは、家で飲んでいるものの名前を一度確認してみてください。
麦茶なら、遠慮せずに飲んでいいものです。

最終更新日 2026年9月6日